東野圭吾「恋のゴンドラ」読書感想文
東野圭吾の小説「恋のゴンドラ」を読んだ感想書きます。
恋愛小説なので、ブログの主旨にもあってると思うので。
ふつうにネタバレするんで、ネタバレいやだと言う人は読まないでください。
スキー場が舞台の連作短編小説。
タイトル通り、ほとんど恋愛の話。
群像劇だが、実質、日田(ひだ)という男が主人公。
もくじ
①浮気相手の桃実(ももみ)とスノボ旅行に来た広太(こうた)は、友達と遊びに来ていた本命彼女の美雪(みゆき)と、ゴンドラで乗り合わせてしまう。
広太は美雪に気付いたが、彼女はこちらに気付いていない。
ゴーグルとマスクをしているので気付かれていないが、声を出すわけにもいかなくなる。
美雪たちのグループは男の話をし出して、美雪は女友達相手に広太の話をする、浮気真っ最中の広太にとっては地獄の展開。
乗り切ったかと思えたが、結局浮気はバレます。
②主人公の日田(ひだ)登場。
日田は、職場の仲間たちとスノボ旅行に来ていた。
男性陣はほかに、女遊びしまくりの水城(みずき)と二人の後輩の月村(つきむら)。
女性陣は、秋菜(あきな)と麻穂(まほ)。
日田は、水城が秋菜と付き合っているにもかかわらず麻穂に手を出そうとしてるんじゃないかと心配していた。
日田は、水城に狙われているかもしれないと麻穂を心配するが・・・
実は、麻穂は月村と付き合ってました、というオチ。
水城はそのことに気付いていたし、日田が麻穂をいいなと思っていることにも気付いていた。
③ ②の「リフト」でフラれた形だった日田は、しかしいい女性と出会っていた。
それが、同じ職場の橋本(はしもと)さん。
最近転職してきたばかりの彼女。付き合ってまだ短いが、日田は彼女しかいないと考えていた。プロポーズを決意し、水城たちも協力することにした。
計画は、道に迷った橋本さんを顔を隠した日田が救い、それから顔を明らかにしてプロポーズするというもの。
ところが
橋本さんを「ミユキ」と呼ぶ男がいきなり現れる。
橋本さんもその男を「コウタ」と呼ぶ。
プロポーズを前に足止めを食らった日田は、目の前で、いきなり現れた男、コウタのプロポーズを見せられる。自分がするはずだったのに・・・
日田にとって大事な橋本さんは、広太にとって大事な美雪だった。
①の美雪=③の橋本さんだったのだ。
広太は美雪に、別れの原因となった浮気を謝り、坊主頭を露わにし反省の気持ちを示したことで、許してもらう(チョロ)
プロポーズしようとしていた相手を目の前で奪われる。
日田にとって、かわいそ過ぎる結末。
ところが日田は良いやつだから、正体を明かさぬまま、復縁した二人に拍手を送る。
出来るかね、そんなこと。
④失恋した日田は水城といっしょにゲレコンに参加する。
ゲレンデコンパ。スキー場を使った異性との出会いの場だ。
そこで日田たちは、①の桃実と弥生に出会う。
女好きの水城だがガツガツ行かず、日田のフォローにまわっている。
ところが不器用な日田は、狙っている桃実に、彼女がまったく食いついていないアメフトの話を延々としてしまう。
滑りに行っても、桃実のことをまったく気にせず爆走して、彼女を置いてきぼりにしてしまう。
ゲレコンの告白タイム。
日田は桃実に告白するが、当然ながら告白の返事は「NO」
日田の職場、ホテルのレストランで二人は再会する。
そこでの立ち振る舞いを見たことで、桃実は日田を見直す。
仕事している日田は、男としてかっこよかったのだ。
ゲレンデマジックという言葉がある。
日田の場合は逆だったのだ。
いわば逆ゲレンデマジック。
日田は、ゲレンデに来ると魅力が半減してしまう、レアな人物だった。
桃実の日田を見る目が変わって、④ゲレコンは終わり。
⑤の「スキー一家」は偏見の話。
人それぞれ偏見があるものだ。
たとえばぼくは、パチンコ屋店員に偏見を持っている。
パチンコ屋女店員は美人が多いが、性格は悪そう。
マル〇ンなんかは、店員の顔写真がズラっと並んでいて、それを見て思うのは、ルックスがいい女店員が多いなということ。
でも、あんまり、パチンコ屋店員と付き合いたいとは思わない。たとえ顔が良くても、どうしても性格悪いイメージがある。
それはなぜか?
そもそもがパチンコ屋営業は、ほかの商売と比べて異質なんだよね。
牛丼屋でも、ハンバーガー屋でも、ラーメン屋でも、寿司屋でも、パン屋でも、レストランでも、本屋でも、家具屋でも、服屋でも、靴屋でも、眼鏡屋でも、電器屋でも、コンビニでも、スーパーでも、マッサージ店でも、喫茶店でも、居酒屋でも、スポーツジムでも、テーマパークでも、
お客さんを喜ばせれば喜ばせるほど、お金になるようになっている。
ところがパチンコ屋は違う。お客さんが負けてお金を失っていやな気持ちになればなるほど、店が儲かるようになっている。
【お客さんの幸せ=店の幸せ】ではなく、【お客さんの不幸=店の幸せ】になっているパチンコ屋。そんな罪深い店で働いてる人の性格が良いなどと、果たして言えるだろうか?
客は散財が約束されているから、当然精神が荒む。
パチンコ依存症患者は、借金もあってまともな生活が出来ていない。
そしてそんな客と関わっていれば、パチンコ屋店員の性格はもっと悪くなってしまう。悲しいことだが、悪循環が決定的なのだ。
あくまで偏見としてるが、この考えは的を得てると思いませんか?
まあ判断は、読んでる人に任せますが。
②でカップルになり結婚した月村と麻穂
ぼくがパチンコ屋店員に偏見を持っているように、麻穂のお父さんが、根深い偏見を持っている。
それが、「スノーボーダーはクズしかいない」というものだ。
父親はスキーを愛し、やたらスノボを敵視している。
だから月村は、スノーボーダーということを隠して、お義父さんとスキー旅行に出かける。
月村と麻穂は、父親の偏見を覆すために、ある作戦を実行していた。
その作戦はこうだ。
父親とスキーがすごく上手い男性を知り合わせて、実はそのスキーヤーが、スノーボーダーとしてもプロ級の腕前だと見せつけること。
父親の偏見に衝撃を与えたが、彼はしょんぼりしてしまった。
⑥もう一度、プロポーズ大作戦。
水城は日田に、桃実にプロポーズするよう、けしかける。
話は進み、日田と水城、桃実と弥生の四人で、スノーボード旅行に行くことに。
ところが、日田が転んで怪我してしまい、プロポーズ大作戦は中止。
水城は棚からぼた餅的な展開で、弥生と同じ部屋に泊まれそうになって、内心喜ぶ。水城はずっと弥生にアプローチしていて、「本命彼女はいるが浮気相手になってくれないか?」という図々しいお願いをしてきていたからだ。
ところが、部屋まで向かうエレベーターの前で、弥生の顔つきが変わる。彼女は、水城の知らぬ間に進行していた作戦を明かす。
実は、水城が秋菜にプロポーズするよう仕組んでました、というオチ。
秋菜が向かう先のスイートルームで待っていた。
日田の怪我も演技。
覚悟を決めて部屋に入り、水城は一世一代の告白をする。
プロポーズ大作戦は成功し、水城と秋菜は結婚を決める。
⑦最後。主人公の日田も幸せにならなければ。
ところがいい感じだったのに、幸せになれなかった。
日田を幸せにしてやれよ、と作者に対しぼくは思った。
自分が買ったのはハードカバーだけど、文庫のほうが安いから↓